最期の航海


ジャニーズワールドという舞台を観た。

わたしの中でジャニーズワールドの世界というのは混沌の一言に尽きた。
初日、12月の半ば、1月の半ば、千秋楽の5日前、1月の半ばでは昼夜観劇した。
計5回の観劇だった。


初日は、何も考えることが出来ないくらいその世界のカオスさにやられてしまった。
以前に上演されていたジャニーズワールドのことを何一つ知識として把握せずに向かったからだ。まあ、もし人づてや何かしらで知識を入れて行ったとしても到底初見で理解にまで落とし込めないであろう舞台だったとは思うけれども。

5回観たいま現在も、正直に言ってあの舞台のことを「わかった」とは言えないなぁと思うしわかったところで言葉にまとめられるものじゃないなと。あれは正に考えるな、感じろという舞台なんだろう。





わたしはえび担になる前に応援していたグループで、二度も脱退を見てきた。
そのうち、自担にはずっとアイドルをしつづけてほしいという願いが自分の中に芽生えた。
A.B.C-Zに降りた後も、以前とは熱量こそ違えど、アイドルとしての姿を見守っていたかった。

田口がKAT-TUNを、事務所を辞め、アイドルとして生きるのを辞めることを知ったとき。
わたしの担当である五関さんのことを、思い浮かべずにはいられなかった。


ジャニーズワールドの初日。
わたしは舞台上で、スターダンサーに出逢った。




五関さんであって、スターダンサーでもあった舞台上のその人を観て、なにやら気持ちがざわざわとするのを感じた。
でも、初日は本当に何もかもわからなくて、あっというまに終わってしまった。
消化することができないまま、16日にも観劇した。やはり、スターダンサーに釘付けになった。
それはわたしが五関担だからだと思っていたんだけれど、それだけではなかった。


雑誌に載っていた田口の一万字インタビューを読み、その内容で田口がもうアイドルとしては生きていけないのだと納得した。
わたしは、かつての担当がアイドルとして死ぬことを知った。

だからこそ、スターダンサーの姿が強く残ったんだと思う。



自分の為だけのステージで、自分の命をかけて、ダンスを踊り続けたスターダンサー。

船が揺れ、浸水で周りが不安に騒めく中、スターダンサーはこう言った。

「演奏を止めるな!乗客を安心させるためにも、俺たちにできることを最後までやり続けよう」

演奏が続き、精悍な顔つきで踊り続け、ステージから降りようとはしない。周りでは怒号が飛びかい、悲鳴があがる。幾度もよろけながら、それでもスターダンサーは踊ることを止めない。

直接的に死んだと表現はされていないけど、船が沈む音がし、辺りには誰もいなくなる。
無音のなか、バイオリンの音だけが一人ぼっちの彼に寄り添っていく。

そしてスターダンサーは乾いた笑いを浮かべながら、こう言うんだ。 



「こんな時に踊り続けるなんて、狂ってるよな」


船が沈没してしまうというのに、彼がとった選択は、ステージで死ぬまで踊り続けるというものだった。

踊り続けた結果、彼は沈む。
最期まで踊りを止めずに、ついには船と共に死んだ。






「…でもありがとう、いい曲だ

魂が安らぐ」


このセリフを口にする五関さんは、五関さんであって、五関さんではない。
スターダンサーその人だと思う。

海の底の豪華客船で、彼はいつまでもバイオリンの音で踊り続ける。
もう目的なんてものはきっとなくて、ダンサーとして生き、ダンサーとして死ぬ。その為だけに、なんだと思う。



五関さんがこの役を演じてくれたことが、わたしにとってどれだけの希望になったことだろう。
ステージに立つことをやめずに踊り続けるその姿に、どれだけ感謝したことだろう。

舞台の中の一場面でしかないタイタニックの悲劇は、わたしにとって希望だった。


死ぬまでずっとアイドルでいて欲しい。
命をかけてステージで生き続けて欲しい。

こんなの勝手な願いだ。ひとの人生なんだから、願うことすらきっと本当ならしてはいけないんじゃないかと思う。
田口の一万字を読んで、よりそう思ってしまった。アイドルとして生きて、アイドルのまま死んで欲しい。そんなこと、願っていることすら、田口を観ている時には気づかなかった。


わたしはこの無謀な願いを、夢を、五関さんに叶えて欲しいのだ。

命が尽きるその瞬間まで、踊り続けていて欲しい。


スターダンサーが舞台の上で、踊りながら死んでいったように。






五関さんに対するこの妄執のような願いに、スターダンサーは応えてくれたと、勝手に思っている。
いわばあの役は、わたしの夢なんだ。希望なんだ。


ジャニーズワールドという舞台の良し悪しはやはりわからないけれど、わたしはスターダンサーが生きて死ぬ、あの場面が好きだった。




「演奏を止めるな!乗客を安心させるためにも、俺たちにできることを最期までやり続けよう


わたしには、このセリフがこう聞こえていた。
だから、スターダンサーは、わたしを救ってくれた。

あの役をそのまま五関さんに重ねてしまうのはあまりに短絡的かもしれないけれど、ダンスが好きだと言ってくれる五関さんだからこそ、やっぱり夢を見てしまうのだ。


アイドルはいつか死ぬ。それが、ひとの人生としての一生が終わる瞬間と同時であって欲しいという大それた願いを、五関晃一という人ならば、叶えてくれそうだと思っている。




ジャニーズワールドという舞台の上で、幾度もタイタニックと共にあった五関さんの分身なんじゃないかな、スターダンサーという人は。

狂っていようが、構わない。最期の一呼吸まで、踊り続けて欲しい。
その姿が、いつまでもわたしの救いであり、希望だから。





スターダンサーへ。
最期の航海、お疲れ様でした。
またいつか幕があがるその時まで、海の底で安らかにお休みください。





そしてA.B.C-Zの皆さん、他出演者の皆さん、二ヶ月間お疲れ様でした!!

ありがとうございました。








全てはすっごく私情にまみれた見解ですので、悪しからず。